口演童話
アンドロメダ行乗車券
うちのお父さんは旅行が好きだ。二、三日帰ってこないことがある。車で全国を旅しているらしい。船や飛行機も使うことがあるらしい。私も何回か連れて行ってもらったことがあるが、ずっと車の中で一回も船や飛行機に乗ったことがない。何時間も車の中に閉じ込められているみたいで、もう旅行に連れて行ってほしいとはおねだりしなくなった。
そんなある日、お母さんにお父さんの秘密を教えてもらった。銀河鉄道の乗車券を持っていると。銀河鉄道というのは、宮沢賢治の童話にでてくる話の鉄道こと。本当にそんな鉄道はないと思っていた。
「嘘だと思うなら、お父さんの机の引き出しを見てご覧」
「ないよ」
「一番下の引き出しだよ」
まさかと持って中を見てみると、『アンドロメダ行乗車券』という透明ケースに入った乗車券が見つかりました。ちょうどお父さんが帰って来たので聞いてみました。
「お父さん、これ何?」
「あっ、お母さんしゃべったな」
「一緒に行きたいなあ」
「これは一人しか乗れないんだ」
何でも乗車券は一枚しかなくて、一人しか乗れないらしい。使用期限は無期限で、永遠に何回でも使えるらしい。
『アンドロメダ行乗車券』を見てからは、その事が頭から離れなくなり、いつか乗ってやろうと思うようになりました。それから時間がどんどん過ぎて、私も二十歳を過ぎていました。もう旅行も一人でできる年頃です。お父さんに頼んで『アンドロメダ行乗車券』を貸してもらおうともいました。だけどそれは叶わないことでした。
二年前にお父さんはなくなり、今はお母さんと二人で暮らしていました。お父さんの机は今でも残っています。一番下の引き出しを見てみましたが、中には『アンドロメダ行乗車券』はありませんでした。他の引き出しも全部見ましたが、どこにも乗車券はありませんでした。
「お母さん、引き出しの中の『アンドロメダ行乗車券』知らない?」
「あれね。お父さん大事にしていたから、死んでからも旅行したいと思って、棺の中に一緒に入れたの」
夜空を見上げていたら、お父さんの乗ったアンドロメダ行列車が走っていくような気がしました。
口演童話
参考:アンドロメダ行乗車券
アンドロメダ行乗車券
うちのお父さんは旅行が好きだ。二、三日帰ってこないことがある。車で全国を旅しているらしい。船や飛行機も使うことがあるらしい。私も何回か連れて行ってもらったことがあるが、ずっと車の中で一回も船や飛行機に乗ったことがない。何時間も車の中に閉じ込められているみたいで、もう旅行に連れて行ってほしいとはおねだりしなくなった。
そんなある日、お母さんにお父さんの秘密を教えてもらった。銀河鉄道の乗車券を持っていると。銀河鉄道というのは、宮沢賢治の童話にでてくる話の鉄道こと。本当にそんな鉄道はないと思っていた。
「嘘だと思うなら、お父さんの机の引き出しを見てご覧」
「ないよ」
「一番下の引き出しだよ」
まさかと持って中を見てみると、『アンドロメダ行乗車券』という透明ケースに入った乗車券が見つかりました。ちょうどお父さんが帰って来たので聞いてみました。
「お父さん、これ何?」
「あっ、お母さんしゃべったな」
「一緒に行きたいなあ」
「これは一人しか乗れないんだ」
何でも乗車券は一枚しかなくて、一人しか乗れないらしい。使用期限は無期限で、永遠に何回でも使えるらしい。
『アンドロメダ行乗車券』を見てからは、その事が頭から離れなくなり、いつか乗ってやろうと思うようになりました。それから時間がどんどん過ぎて、私も二十歳を過ぎていました。もう旅行も一人でできる年頃です。お父さんに頼んで『アンドロメダ行乗車券』を貸してもらおうともいました。だけどそれは叶わないことでした。
二年前にお父さんはなくなり、今はお母さんと二人で暮らしていました。お父さんの机は今でも残っています。一番下の引き出しを見てみましたが、中には『アンドロメダ行乗車券』はありませんでした。他の引き出しも全部見ましたが、どこにも乗車券はありませんでした。
「お母さん、引き出しの中の『アンドロメダ行乗車券』知らない?」
「あれね。お父さん大事にしていたから、死んでからも旅行したいと思って、棺の中に一緒に入れたの」
夜空を見上げていたら、お父さんの乗ったアンドロメダ行列車が走っていくような気がしました。
口演童話
参考:アンドロメダ行乗車券