ジョークボックス「オリンピックはみんな平等」
近頃のオリンピックは、記録ばかりに目が行って、より速くより高くばかりで、みんなが平等である精神が欠けている。そこで世界オリンピック協会は考えた。
「今年3030年のオリンピックからは、みんなが平等になるように条件を同じにしたいと思います。前回の大会では、100m8秒台の記録が出ましたが、今回は10秒に届かないかもしれません。でも条件が同じなんですから、参加選手の記録が公平に評価されます」
「それで具体的にはどうなるんですか?」
「陸上選手のシューズは、すべてこちらで用意させていただきます。スタートライン後ろにある箱に、足のサイズの違うシューズが用意されています。自分のサイズのシューズに履き替えて、スタートラインの位置についてください。ウェアも同じ要領です。更衣室で着替えてください。係員のチェックが済んだ人には、ゼッケン番号をつけさせていただきます」
「ほかの競技ではどうなりますか?」
「例えば水泳なども同じ塩梅で、自分に合った水着に着替えて、スタート台に上ってください。冬季オリンピックも同じスタイルに今後なります。自分のスキー板を用意する必要はなくなります。必要な用具はすべてこちらで用意いたします」
会場のざわつきが止まらない中、さらに協会側の話は続きました。
「マラソンのコースは、こちらでスタートとゴールは用意します。コース通り走れば、42.195kmになっています。だけどそれがベストコースでないと考えるならば、自由にコースを変更していただいて結構です」
「どういうことです?」
「マラソンコースだけは、直線コースが作れません。トラックを何周では趣向がないので、自由とします」
「それじゃあ、近道をする選手がいるのではないのでしょうか?」
「選手一人一人にGPSをつけてもらい、位置情報からどれだけ走ったが計測します。だから近道をしてゴールしても、走った距離が42.195kmになっていなかったら失格となります。逆に多く距離を走ってゴールした人には、メダルには手が届かなくても副賞をと考えています」
「ちなみに副賞というのは何ですか?」
「今いちばん多い意見は、有名メーカーのシューズとウェアです。まだ決まっていませんので、大会に間に合うよう決めたいと思います。ちなみに私は賞金という意見を出しています」
そんなこんなで一応記者たちも納得して、記者会見は終了しました。選手の中からは賛否の声が上がりましたが、スポーツ用具を作っているメーカーからは、異議申し立ての反対意見が世界オリンピック協会に提出されました。
「わが社の製品の良さが世界にわかってもらえる絶好のチャンスだったのに、事前の用具ルール変更の知らせもなく突然の変更。販売戦略も見直さないといけない」
「いい製品を使って新記録を出して、金メダルを取りたいという選手たちの夢を奪う理不尽なルール変更だ」
各メーカーから似たような意見が、多数協会に提出されました。
あまりにも選手、メーカーに及ばず内外から反対意見が寄せられました。協会はもう一度会議を開き、落としどころを協議しました。
「まず今回の混乱を招きましたことに深くお詫びいたします」
「協議の結果どうなったのですか。従来通り?まさか、今回は中止見送り!?」
「今回の騒動で中止になったのでは、選手たちに大変申し訳ない。この日に合わせて日々練習してきたことが、すべて無駄になってしまいます。協議の結果、今回の問題を解決するのは、これしかないという結果に至りました」
「それでどうなったのですか?」
記者たちもテレビの向こうの視聴者も固唾をのんで、記者会見会場を見守りました。
「今回は選手のゼッケン番号だけを変更いたします。加えてメダルの授与はありません。それと入賞は10位までとします」
「それで“ゼッケン番号の変更”というのは何ですか?」
「番号ではなく“賛成”“反対”の文字といたします。賛成の入賞者が多ければ、次回からこちらのルールで大会を開き、反対が多ければ従来通りとさせていただきます」
世界中に号外が流れた一日でありました。宇宙船に乗っていた人たちには、光よりも速くニュースが届けられました。だってそうでしょう。10光年先の宇宙船に電波でニュースを届けていたのでは、大会は終わっているし、次の大会も終わってしまっている。
参考:オリンピックはみんな平等
ジョークボックス
近頃のオリンピックは、記録ばかりに目が行って、より速くより高くばかりで、みんなが平等である精神が欠けている。そこで世界オリンピック協会は考えた。
「今年3030年のオリンピックからは、みんなが平等になるように条件を同じにしたいと思います。前回の大会では、100m8秒台の記録が出ましたが、今回は10秒に届かないかもしれません。でも条件が同じなんですから、参加選手の記録が公平に評価されます」
「それで具体的にはどうなるんですか?」
「陸上選手のシューズは、すべてこちらで用意させていただきます。スタートライン後ろにある箱に、足のサイズの違うシューズが用意されています。自分のサイズのシューズに履き替えて、スタートラインの位置についてください。ウェアも同じ要領です。更衣室で着替えてください。係員のチェックが済んだ人には、ゼッケン番号をつけさせていただきます」
「ほかの競技ではどうなりますか?」
「例えば水泳なども同じ塩梅で、自分に合った水着に着替えて、スタート台に上ってください。冬季オリンピックも同じスタイルに今後なります。自分のスキー板を用意する必要はなくなります。必要な用具はすべてこちらで用意いたします」
会場のざわつきが止まらない中、さらに協会側の話は続きました。
「マラソンのコースは、こちらでスタートとゴールは用意します。コース通り走れば、42.195kmになっています。だけどそれがベストコースでないと考えるならば、自由にコースを変更していただいて結構です」
「どういうことです?」
「マラソンコースだけは、直線コースが作れません。トラックを何周では趣向がないので、自由とします」
「それじゃあ、近道をする選手がいるのではないのでしょうか?」
「選手一人一人にGPSをつけてもらい、位置情報からどれだけ走ったが計測します。だから近道をしてゴールしても、走った距離が42.195kmになっていなかったら失格となります。逆に多く距離を走ってゴールした人には、メダルには手が届かなくても副賞をと考えています」
「ちなみに副賞というのは何ですか?」
「今いちばん多い意見は、有名メーカーのシューズとウェアです。まだ決まっていませんので、大会に間に合うよう決めたいと思います。ちなみに私は賞金という意見を出しています」
そんなこんなで一応記者たちも納得して、記者会見は終了しました。選手の中からは賛否の声が上がりましたが、スポーツ用具を作っているメーカーからは、異議申し立ての反対意見が世界オリンピック協会に提出されました。
「わが社の製品の良さが世界にわかってもらえる絶好のチャンスだったのに、事前の用具ルール変更の知らせもなく突然の変更。販売戦略も見直さないといけない」
「いい製品を使って新記録を出して、金メダルを取りたいという選手たちの夢を奪う理不尽なルール変更だ」
各メーカーから似たような意見が、多数協会に提出されました。
あまりにも選手、メーカーに及ばず内外から反対意見が寄せられました。協会はもう一度会議を開き、落としどころを協議しました。
「まず今回の混乱を招きましたことに深くお詫びいたします」
「協議の結果どうなったのですか。従来通り?まさか、今回は中止見送り!?」
「今回の騒動で中止になったのでは、選手たちに大変申し訳ない。この日に合わせて日々練習してきたことが、すべて無駄になってしまいます。協議の結果、今回の問題を解決するのは、これしかないという結果に至りました」
「それでどうなったのですか?」
記者たちもテレビの向こうの視聴者も固唾をのんで、記者会見会場を見守りました。
「今回は選手のゼッケン番号だけを変更いたします。加えてメダルの授与はありません。それと入賞は10位までとします」
「それで“ゼッケン番号の変更”というのは何ですか?」
「番号ではなく“賛成”“反対”の文字といたします。賛成の入賞者が多ければ、次回からこちらのルールで大会を開き、反対が多ければ従来通りとさせていただきます」
世界中に号外が流れた一日でありました。宇宙船に乗っていた人たちには、光よりも速くニュースが届けられました。だってそうでしょう。10光年先の宇宙船に電波でニュースを届けていたのでは、大会は終わっているし、次の大会も終わってしまっている。
参考:オリンピックはみんな平等
ジョークボックス