雲の上の小さなパン屋さん
雲の上の小さなパン屋さんには、くりくり目玉のもじゃもじゃ頭の小さなコックさんがいました。もじゃもじゃ頭の髪の毛は、帽子に隠れて見えません。縦のもじゃもじゃなのか、横にもじゃもじゃなのか、誰も見たことがありません。
夕方になると雲の上から降りてきて、雲で作ったパンを配ります。雨の日は営業中止です。雲から伸びてきたはしごの下で、パンを配ります。はしごは地上のどこにつくのか決まっていません。晴れた日にみんなは、はしごがどこに降りてくるのが気がかりで、目を凝らして探します。
パンは無料で配られます。材料費は雲なのですから、パン屋さんには売って儲けようという気持ちは全くありません。小さなパン屋さんが作るパンはみんな小さくて、一口で食べられる大きさです。飲み込んでしまうと、美味しい味がすぐ消えてしまうので、みんなはゆっくり噛み締めて食べます。
パンを手に入れた人は本当にラッキーです。親たちはパンを探し回り、子どもに与えます。幸運に巡り会えて手に入れたパンです。子どもたちもその幸運のお裾分けに預かります。親自信自分の親からパンをもらい元気に育ってきました。頬がぷくりと膨らみ、風を吹き飛ばしてくれます。
「パンの作り方を教えてほしい」と思った人もいましたが、雲の上のパン屋さんのところに行かなければなりません。でもはしごを支える力は、小さな体のパン屋さんが登るのがギリギリです。大人の人が登ったら、はしごが壊れてしまいます。
小さなパン屋さんは生きている限り、パンを配ろうと思っています。数は少ないかもしれませんが、晴れた日は毎日どこかの場所で、みんなにパンを届けたいと思っています。雲の上から元気なみんなの笑顔を見ていると、励みになってまた美味しいパンを作らねばと思うのです。
ある時、長雨が続いてはしごが下ろせなくなりました。そのせいかみんなの顔は、少し曇りがちに見えました。子どもたちは親にせがみます。
「雲の上のパン屋さんのパンが食べたいよう」
がっかりさせたくなくて、本当のことを親たちは言いませんでした。
ある親が言いました。
「止まない雨はないんだよ。あと少しの辛抱で晴れるから」
「ホント?」
「そうしたらまた、雲の上のパン屋さんの美味しいパンが、食べられるようになるから」
それを聞いて子どもたちは安心したのか、親に無理を言うこともなくなりました。
そして、それはそれは長い雨がやみました。すると空に虹がかかって、みんなから拍手が起こりました。その拍手に迎えられるように、雲の上からはしごがおりてきました。この出来事を子どもたちは、大人になっても忘れることはありませんでした。
参考:雲の上の小さなパン屋さん
口演童話
雲の上の小さなパン屋さんには、くりくり目玉のもじゃもじゃ頭の小さなコックさんがいました。もじゃもじゃ頭の髪の毛は、帽子に隠れて見えません。縦のもじゃもじゃなのか、横にもじゃもじゃなのか、誰も見たことがありません。
夕方になると雲の上から降りてきて、雲で作ったパンを配ります。雨の日は営業中止です。雲から伸びてきたはしごの下で、パンを配ります。はしごは地上のどこにつくのか決まっていません。晴れた日にみんなは、はしごがどこに降りてくるのが気がかりで、目を凝らして探します。
パンは無料で配られます。材料費は雲なのですから、パン屋さんには売って儲けようという気持ちは全くありません。小さなパン屋さんが作るパンはみんな小さくて、一口で食べられる大きさです。飲み込んでしまうと、美味しい味がすぐ消えてしまうので、みんなはゆっくり噛み締めて食べます。
パンを手に入れた人は本当にラッキーです。親たちはパンを探し回り、子どもに与えます。幸運に巡り会えて手に入れたパンです。子どもたちもその幸運のお裾分けに預かります。親自信自分の親からパンをもらい元気に育ってきました。頬がぷくりと膨らみ、風を吹き飛ばしてくれます。
「パンの作り方を教えてほしい」と思った人もいましたが、雲の上のパン屋さんのところに行かなければなりません。でもはしごを支える力は、小さな体のパン屋さんが登るのがギリギリです。大人の人が登ったら、はしごが壊れてしまいます。
小さなパン屋さんは生きている限り、パンを配ろうと思っています。数は少ないかもしれませんが、晴れた日は毎日どこかの場所で、みんなにパンを届けたいと思っています。雲の上から元気なみんなの笑顔を見ていると、励みになってまた美味しいパンを作らねばと思うのです。
ある時、長雨が続いてはしごが下ろせなくなりました。そのせいかみんなの顔は、少し曇りがちに見えました。子どもたちは親にせがみます。
「雲の上のパン屋さんのパンが食べたいよう」
がっかりさせたくなくて、本当のことを親たちは言いませんでした。
ある親が言いました。
「止まない雨はないんだよ。あと少しの辛抱で晴れるから」
「ホント?」
「そうしたらまた、雲の上のパン屋さんの美味しいパンが、食べられるようになるから」
それを聞いて子どもたちは安心したのか、親に無理を言うこともなくなりました。
そして、それはそれは長い雨がやみました。すると空に虹がかかって、みんなから拍手が起こりました。その拍手に迎えられるように、雲の上からはしごがおりてきました。この出来事を子どもたちは、大人になっても忘れることはありませんでした。
参考:雲の上の小さなパン屋さん
口演童話