物語「わに君、ははは」
はじめに:
やさしい小鳥さんは、虫歯が痛いというわに君の口の中へ
ところが、わに君が口を閉じてしまったから、さあ大変!
小鳥さんの運命や、いかに!?
ある日、わに君が、しっぽをぴゅるんぴゅるん振りながら、お散歩をしていました。
「今日は天気がいいので、気持ちがいいなあ。こんな日には、水に浮かんでのんびりするのが一番だ」
わに君は、道にぺこぺこ足跡をつけながら、そう言いました。
「おやぁ、水の匂いだ。近くに川があるんだ」
わに君は、ずずーんずずーん匂いのするほうに歩いていきました。
「やっぱり川だ!」
ざぶーん! ぷかりっ、・・・。
わに君は、仰向けになって、川に浮かびました。
「こうしてぷかぷか浮いていると、最高に気分がいい。あとはおいしいものが食べられれば、言うことなしだ。おやぁ、何か流れてきたぞ」
まあるい葉っぱが一枚流れてきました。
ぴょーん! ぴたりっ、・・・。
水の中から飛び出して、葉っぱに飛び乗ったのは、かえる君でした。
「やあ、かえる君。こんにちは」
「こ、こんにちは。わに君」
「かえる君、ちょうどいいところに来てくれた」
「ど、どうして?」
「さっきから、奥歯がずきんずきん痛むんだ。これじゃあ、おいしいものが食べられない」
「そ、それは大変だねえ」
「かえる君、お願いがあるんだけど、きいてくれる?」
「お願いって?」
「ぼくの口の中に入って、虫歯を抜いてくれないか?」
「ぼ、ぼく、ちょっと今忙しいんだ。誰か他の人に頼んでくれる? じゃあ」
ぴょーん! ぽちょりっ、・・・。
かえる君は、川に飛び込むと、そのまま川上へ泳いでいきました。
「あっ、かえる君! ・・・」
かえる君が乗っていた葉っぱが、わに君の顔のそばをゆっくり流れていきました。
「きっとかえる君、この前のこと怒っているんだ。かえる君が葉っぱの上で寝ていたところを、ぼくが、思いっきりひっくり返したから。今度会ったら、謝ろうと思っていたのに。かえる君の目、『何でこの前のこと、謝らないんだよ』って目してたのに。気付くのが遅いんだよな、ぼくは」
ちちち・・。
「わに君、こんにちは」
わに君のしっぽに止まった小鳥さんが、そう言いました。
「小鳥さん、こんにちは」
「波にぷかぷか浮いて、気持ちよさそうねえ」
「気分は最高なんだけど、さっきから、奥歯がずきんずきん痛いんだ。これじゃあ、おいしいものが食べられない」
「それは大変ねえ」
「小鳥さん、お願いがあるんだけど、きいてくれる?」
「お願いってなあに?」
「ぼくの口の中に入って、虫歯を抜いてくれないか?」
「わたしにできるかしら」
「小鳥さんは、からだが小さいから、ぼくの口の奥まで入れると思うんだ。ぼくたちともだちだろう」
「じゃあ、やってみる」
小鳥さんは、わに君の下あごの先に、止まりました。
「口をあけてくれなきゃ、中が見えないわ」
「こうかい」
小鳥さんは、わに君の口の奥を覗き込みました。
「もっと、大きく開けてくれなきゃ、見えないわ」
「こうかい」
わに君は、さっきより口を大きく開きました。小鳥さんは、わに君の上あごに位置をかえました。
「どこに虫歯があるの?」
「口のもっと奥にあるんだ」
小鳥さんは、少しだけわに君の口の中に入りました。
「見えないわ」
「もっと奥だよ。もっと奥」
小鳥さんは、わに君の長い口の中に、どんどん、どんどん入っていきました。
そのときでした、
ぱっくん!
わに君の口が閉じられました。
次の瞬間、
「ぎゃ、ぎゃーぁ!」
わに君は、口を大きく開けました。中から小鳥さんが飛び出してきました。
そして、
すぽーん!
わに君の虫歯が一本、空中高く舞い上がりました。
小鳥さんは、わに君のしっぽに止まると言いました。
「わに君、これで虫歯が抜けたわよ」
「小鳥さん、ありがとう。やっぱり持つべきはともだちだな。これでおいしいものが食べられる」
「もう少し、わに君のしっぽで休んでいっていい?」
「ぼくの尻尾が止まり木になるんだったら、いつまでも休んでいいよ」
その様子を見ていたお日様が、青いお空でにっこり笑いました。
空中高く舞い上がった虫歯が、
ぽちゃりっ、ひゅるりるひゅるりる、・・・。こつりんっ。
と、1500万年前の音を出しました。虫歯は、川底の巻貝の化石に当たりました。
(パネルシアター「わに君、ははは」の原作です)
参考:物語「わに君、ははは」
ワニくんのおおきなあし
どういうわけか、みんなよりずっとおおきい足をもつわにくん。街中に出ると、何回も足を踏まれてしまうし、エレベーターのドアには、足の先を挟まれてしまうし、困ったことばかり。何とか足を小さくしようと、洗濯機で洗ってみたり、冷蔵庫に突っ込んでみたり、寝ている間に足が小さくなるように神様に祈ります。
でもあるとき、よくよく考えてみると、足が大きいってことは悪いことばかりでもない、と気づきます。
大型本: 200ページ
出版社: ブックローン出版 (1985/12)
商品パッケージの寸法: 29.2 x 21.4 x 0.8 cm
口演童話
はじめに:
やさしい小鳥さんは、虫歯が痛いというわに君の口の中へ
ところが、わに君が口を閉じてしまったから、さあ大変!
小鳥さんの運命や、いかに!?
ある日、わに君が、しっぽをぴゅるんぴゅるん振りながら、お散歩をしていました。
「今日は天気がいいので、気持ちがいいなあ。こんな日には、水に浮かんでのんびりするのが一番だ」
わに君は、道にぺこぺこ足跡をつけながら、そう言いました。
「おやぁ、水の匂いだ。近くに川があるんだ」
わに君は、ずずーんずずーん匂いのするほうに歩いていきました。
「やっぱり川だ!」
ざぶーん! ぷかりっ、・・・。
わに君は、仰向けになって、川に浮かびました。
「こうしてぷかぷか浮いていると、最高に気分がいい。あとはおいしいものが食べられれば、言うことなしだ。おやぁ、何か流れてきたぞ」
まあるい葉っぱが一枚流れてきました。
ぴょーん! ぴたりっ、・・・。
水の中から飛び出して、葉っぱに飛び乗ったのは、かえる君でした。
「やあ、かえる君。こんにちは」
「こ、こんにちは。わに君」
「かえる君、ちょうどいいところに来てくれた」
「ど、どうして?」
「さっきから、奥歯がずきんずきん痛むんだ。これじゃあ、おいしいものが食べられない」
「そ、それは大変だねえ」
「かえる君、お願いがあるんだけど、きいてくれる?」
「お願いって?」
「ぼくの口の中に入って、虫歯を抜いてくれないか?」
「ぼ、ぼく、ちょっと今忙しいんだ。誰か他の人に頼んでくれる? じゃあ」
ぴょーん! ぽちょりっ、・・・。
かえる君は、川に飛び込むと、そのまま川上へ泳いでいきました。
「あっ、かえる君! ・・・」
かえる君が乗っていた葉っぱが、わに君の顔のそばをゆっくり流れていきました。
「きっとかえる君、この前のこと怒っているんだ。かえる君が葉っぱの上で寝ていたところを、ぼくが、思いっきりひっくり返したから。今度会ったら、謝ろうと思っていたのに。かえる君の目、『何でこの前のこと、謝らないんだよ』って目してたのに。気付くのが遅いんだよな、ぼくは」
ちちち・・。
「わに君、こんにちは」
わに君のしっぽに止まった小鳥さんが、そう言いました。
「小鳥さん、こんにちは」
「波にぷかぷか浮いて、気持ちよさそうねえ」
「気分は最高なんだけど、さっきから、奥歯がずきんずきん痛いんだ。これじゃあ、おいしいものが食べられない」
「それは大変ねえ」
「小鳥さん、お願いがあるんだけど、きいてくれる?」
「お願いってなあに?」
「ぼくの口の中に入って、虫歯を抜いてくれないか?」
「わたしにできるかしら」
「小鳥さんは、からだが小さいから、ぼくの口の奥まで入れると思うんだ。ぼくたちともだちだろう」
「じゃあ、やってみる」
小鳥さんは、わに君の下あごの先に、止まりました。
「口をあけてくれなきゃ、中が見えないわ」
「こうかい」
小鳥さんは、わに君の口の奥を覗き込みました。
「もっと、大きく開けてくれなきゃ、見えないわ」
「こうかい」
わに君は、さっきより口を大きく開きました。小鳥さんは、わに君の上あごに位置をかえました。
「どこに虫歯があるの?」
「口のもっと奥にあるんだ」
小鳥さんは、少しだけわに君の口の中に入りました。
「見えないわ」
「もっと奥だよ。もっと奥」
小鳥さんは、わに君の長い口の中に、どんどん、どんどん入っていきました。
そのときでした、
ぱっくん!
わに君の口が閉じられました。
次の瞬間、
「ぎゃ、ぎゃーぁ!」
わに君は、口を大きく開けました。中から小鳥さんが飛び出してきました。
そして、
すぽーん!
わに君の虫歯が一本、空中高く舞い上がりました。
小鳥さんは、わに君のしっぽに止まると言いました。
「わに君、これで虫歯が抜けたわよ」
「小鳥さん、ありがとう。やっぱり持つべきはともだちだな。これでおいしいものが食べられる」
「もう少し、わに君のしっぽで休んでいっていい?」
「ぼくの尻尾が止まり木になるんだったら、いつまでも休んでいいよ」
その様子を見ていたお日様が、青いお空でにっこり笑いました。
空中高く舞い上がった虫歯が、
ぽちゃりっ、ひゅるりるひゅるりる、・・・。こつりんっ。
と、1500万年前の音を出しました。虫歯は、川底の巻貝の化石に当たりました。
(パネルシアター「わに君、ははは」の原作です)
参考:物語「わに君、ははは」
ワニくんのおおきなあし
どういうわけか、みんなよりずっとおおきい足をもつわにくん。街中に出ると、何回も足を踏まれてしまうし、エレベーターのドアには、足の先を挟まれてしまうし、困ったことばかり。何とか足を小さくしようと、洗濯機で洗ってみたり、冷蔵庫に突っ込んでみたり、寝ている間に足が小さくなるように神様に祈ります。
でもあるとき、よくよく考えてみると、足が大きいってことは悪いことばかりでもない、と気づきます。
大型本: 200ページ
出版社: ブックローン出版 (1985/12)
商品パッケージの寸法: 29.2 x 21.4 x 0.8 cm
口演童話