恐怖体験「仏の座」
仏の滝は有名な観光名所だが、自殺の名所としての裏の顔を持つ。そのためそこでは、数多くの心霊写真が撮られているという・・・・。そんな話に興味を持った小林早苗(仮名:20歳)は、友人の足立健二(仮名:23歳)とともに、夏休みを利用してここにやって来た。
「もう! 健ちゃんが迷うから、暗くなってきちゃったじゃない」
早苗たちがそこに着いたのは、午後8時前。日の長い夏場だが、あたりはそろそろ闇に包まれようとしていた。
「っるせえなあ・・・。いいからさっさと写真とって帰るぞ・・」
「今撮るわよ! せっかく買ったんだから」
彼女はここに来るために、わざわざデジタルカメラを購入した。これだとすぐに再生できて、その場でカメラアングルの良否を決定できるのがいい。投稿雑誌に心霊写真の応募するのも、メールで添付ファイルにして送れば済む。入賞すれば図書券500円だが、特賞は3万円だ。賞をゲットして、彼女は小遣いの足しにする腹積もりだった。
「これ何かしら? 男の影じゃない?」
「どれどれ、・・」
早苗は滝の上に男の影が映っているというが、健二にはその影が見えない。
「ほら、よーく見て! ここに目があって、体つきからすると男に違いないわ」
「そうかなあ。目のようにみえるは花か何かが映っていて、ごつごつしている岩が男の体にみえるだけだよ」
「何言っているのよ! ちゃんと見てよ!」
とそのとき、デジタルカメラの再生画面が切れてしまった。充電切れだ。
「何よお、このデジカメ。もう撮れないじゃないの」
「予備の充電池を持ってこないお前が悪いんだろう」
「いつ切れるかなんて、知らないわよ! 健ちゃんにそんなこと言われるおぼえはないわ! もう帰る」
「おいおい落ち着けよ。他の観光客が、こっちを見ているじゃないか」
「念願の心霊写真が撮れたのに、どうしてバカにされなきゃならないの? もう帰るったら、カ、エ、ル、!」
「俺だって、でたらめを言ったわけじゃないんだ。正直に見たままを言っただけ。よおし、こうなったら証拠を持ってきてやる! 心霊写真じゃないという証を。帰るんじゃないぞ。ここで待っているんだぞ」
健二は、滝の脇にある細い道を登って行った。雑草の長い葉先がまとわりついてくる。顔に木の枝がはねて目に入りそうになる。健二は、少し後悔した。
「意地を張ってここまでやってきたが、もし本当に心霊写真を撮っていたとしたら、これから霊とやらにご対面。おお、くわばらくわばら」
と言いながらも、健二には自信があった。
やがて、健二は滝の上までやってきた。霊が出ると言う雰囲気は全くなかった。むしろ宝石のような一番星が出ていてロマンチックだ。
「この辺だな、男の影があったというのは」
いくら目を凝らしても、男の影などありはしなかった。あったのは、仏の座と言う赤紫の花だ。早苗が、男の目と間違えたのは仏の座で、やはりそのまわりにある岩が体に見えたのだ。健二は、証拠を持って帰ろうと手を伸ばしたが、仏の座は遠くて手が届かなかった。岩伝いに行けば取れるかもしれないが、靴やズボンの裾がびしょぬれになりそうだ。そこで靴を脱いで、木の枝につかまりながら岩伝いに歩いた。とそのときだ。苔に足がとられて、健二は枝にぶらさがった。枝は、健二の体を支えられるわけもなく、もろくも折れた。
「あっ!」
まるでスローモーションのように、健二はまっ逆さまに滝に吸い込まれてしまった。そのとき早苗は、滝の水音の中から何か聞こえた気がしたが、魚たちのささやきかもしれないと思った。
次の日、地元の新聞に、
「昨日夕刻、A青年が滝から投身自殺を図る。目撃者の話しによると、A青年とその恋人と思われる女性Kさんとが口論をしていたという。Kさんは意識喪失で現在入院しているので、真相は定かではないが、青年は失恋の果てに死を選んだようだ。滝の上にはきれいに靴がそろえて置いてあったと言う」
と、興味本位な記事が掲載された。
音声動画:恐怖体験「仏の座」
恐怖体験
仏の滝は有名な観光名所だが、自殺の名所としての裏の顔を持つ。そのためそこでは、数多くの心霊写真が撮られているという・・・・。そんな話に興味を持った小林早苗(仮名:20歳)は、友人の足立健二(仮名:23歳)とともに、夏休みを利用してここにやって来た。
「もう! 健ちゃんが迷うから、暗くなってきちゃったじゃない」
早苗たちがそこに着いたのは、午後8時前。日の長い夏場だが、あたりはそろそろ闇に包まれようとしていた。
「っるせえなあ・・・。いいからさっさと写真とって帰るぞ・・」
「今撮るわよ! せっかく買ったんだから」
彼女はここに来るために、わざわざデジタルカメラを購入した。これだとすぐに再生できて、その場でカメラアングルの良否を決定できるのがいい。投稿雑誌に心霊写真の応募するのも、メールで添付ファイルにして送れば済む。入賞すれば図書券500円だが、特賞は3万円だ。賞をゲットして、彼女は小遣いの足しにする腹積もりだった。
「これ何かしら? 男の影じゃない?」
「どれどれ、・・」
早苗は滝の上に男の影が映っているというが、健二にはその影が見えない。
「ほら、よーく見て! ここに目があって、体つきからすると男に違いないわ」
「そうかなあ。目のようにみえるは花か何かが映っていて、ごつごつしている岩が男の体にみえるだけだよ」
「何言っているのよ! ちゃんと見てよ!」
とそのとき、デジタルカメラの再生画面が切れてしまった。充電切れだ。
「何よお、このデジカメ。もう撮れないじゃないの」
「予備の充電池を持ってこないお前が悪いんだろう」
「いつ切れるかなんて、知らないわよ! 健ちゃんにそんなこと言われるおぼえはないわ! もう帰る」
「おいおい落ち着けよ。他の観光客が、こっちを見ているじゃないか」
「念願の心霊写真が撮れたのに、どうしてバカにされなきゃならないの? もう帰るったら、カ、エ、ル、!」
「俺だって、でたらめを言ったわけじゃないんだ。正直に見たままを言っただけ。よおし、こうなったら証拠を持ってきてやる! 心霊写真じゃないという証を。帰るんじゃないぞ。ここで待っているんだぞ」
健二は、滝の脇にある細い道を登って行った。雑草の長い葉先がまとわりついてくる。顔に木の枝がはねて目に入りそうになる。健二は、少し後悔した。
「意地を張ってここまでやってきたが、もし本当に心霊写真を撮っていたとしたら、これから霊とやらにご対面。おお、くわばらくわばら」
と言いながらも、健二には自信があった。
やがて、健二は滝の上までやってきた。霊が出ると言う雰囲気は全くなかった。むしろ宝石のような一番星が出ていてロマンチックだ。
「この辺だな、男の影があったというのは」
いくら目を凝らしても、男の影などありはしなかった。あったのは、仏の座と言う赤紫の花だ。早苗が、男の目と間違えたのは仏の座で、やはりそのまわりにある岩が体に見えたのだ。健二は、証拠を持って帰ろうと手を伸ばしたが、仏の座は遠くて手が届かなかった。岩伝いに行けば取れるかもしれないが、靴やズボンの裾がびしょぬれになりそうだ。そこで靴を脱いで、木の枝につかまりながら岩伝いに歩いた。とそのときだ。苔に足がとられて、健二は枝にぶらさがった。枝は、健二の体を支えられるわけもなく、もろくも折れた。
「あっ!」
まるでスローモーションのように、健二はまっ逆さまに滝に吸い込まれてしまった。そのとき早苗は、滝の水音の中から何か聞こえた気がしたが、魚たちのささやきかもしれないと思った。
次の日、地元の新聞に、
「昨日夕刻、A青年が滝から投身自殺を図る。目撃者の話しによると、A青年とその恋人と思われる女性Kさんとが口論をしていたという。Kさんは意識喪失で現在入院しているので、真相は定かではないが、青年は失恋の果てに死を選んだようだ。滝の上にはきれいに靴がそろえて置いてあったと言う」
と、興味本位な記事が掲載された。
音声動画:恐怖体験「仏の座」
恐怖体験
映画「自殺サークル」2001
出演: 石橋凌, 永瀬正敏, さとう珠緒, 宝生舞, 余貴美子
監督: 園子温
女子高校生54人が集団自殺!
『エクステ』の園子温の異色サスペンス!
新宿のプラットホーム。楽しげにおしゃべりをする女子高校生54人は、ホームに入ってきた列車の前に、手をつないだまま飛び降りた。同じ頃、各地で集団自殺が次々と起こり始める。“事件”なのか“事故”なのか、迷う警察。そんな中、警視庁の刑事・黒田と渋沢のもとに次回の集団自殺を予告する電話が入る。
出演: 石橋凌, 永瀬正敏, さとう珠緒, 宝生舞, 余貴美子
監督: 園子温
女子高校生54人が集団自殺!
『エクステ』の園子温の異色サスペンス!
新宿のプラットホーム。楽しげにおしゃべりをする女子高校生54人は、ホームに入ってきた列車の前に、手をつないだまま飛び降りた。同じ頃、各地で集団自殺が次々と起こり始める。“事件”なのか“事故”なのか、迷う警察。そんな中、警視庁の刑事・黒田と渋沢のもとに次回の集団自殺を予告する電話が入る。