口演童話「コガネムシは金持ちだ!」
ジリジリジリ。
秋だというのに夏のようです。
汗をかきながら、コガネムシが飛んでいました。
ふと下を見ると、草むらで何かが光りました。
コガネムシは「何だろう?」と思い、おりてみました。
それは、百円玉でした。
キョロキョロキョロ。
コガネムシは、百円玉をかかえて飛んでいきました。
「見たぞ、見たぞ」
草の葉にかくれていたクツワムシが、そう言いました。
「何を見たんだい?」
ちょうど通りかかったコオロギが、そうたずねました。
「さっき、コガネムシが、お金をひろったんだ」
「いくらひろったんだい?」
「重そうにかかえて、飛んでいったから、一円玉じゃない。
百円玉? いや、あれは、五百円玉に違いない」
「聞いたぞ、聞いたぞ、聞いたぞ」
コオロギは、だれに話そうかと考えました。
カマキリに話せば、もういじめられないと思いました。
「コガネムシが大金をひろったって。
これで、かした金がもどってくるぞ。
教えてくれて、ありがとうよ、コオロギ」
その時、カマキリの目とカマが、キラリと光りました。
カマキリは、コガネムシの家に行くとちゅう、
トンボが、話しかけてきました。
「カマキリさん、きょうは何だかうれしそうな顔をしていますね」
「そりゃ、そうさ。かした金がもどってくるんだから」
「だれに、お金をかしたんですか?」
「コガネムシに一万円かしたのよ。
コオロギの話によると、コガネムシのやつ、五百万円もひろったらしくて。
今度はぎゃくに、金をかりようかと思っているくらいさ」
「ほんとうに大金ですね。私もお金をかりようかしら。新しいメガネがほしいので」
「このさい、百万でも二百万でも、かりれるだけかりればいいさ。
ほうっておいたら、金なんてすぐなくなるんだから」
カマキリが、そう言い終わるか終わらないうちに、
トンボは、もうスピードで、コガネムシの家へ飛んで行きました。
コガネムシの家についたトンボは、びっくりしました。
もうコガネムシの家には、長いぎょうれつができていました。
コガネムシがひろったお金のうわさで、みんな集まったのでした。
オオクワガタは、新しい家をたてるお金がほしいという。
モンシロチョウは、結婚するので、お祝いをしていただきたいという。
ツクツクボウシは、思い出作りに、世界いっしゅう旅行をしたいという。
カブトムシは、角をみがく高級油がほしいという。
スズメバチたちは、食べ物をほぞんするつぼを、持てるだけほしいという。
バッタは、肉屋の主人になりたいという。
虫たちの言い分を聞いていたら、きりがありません。
長い長いぎょうれつの最後に、トンボはならびました。
「こうなったら、新しいメガネは、とびっきりいいものを買うわ。
メガネのつるに、ダイヤがいっぱい散りばめられたものとか」
「それにしても、コガネムシが帰ってこないなあ」
「どこかで、大金をうめているのかもしれん」
「コガネムシは、そんな一人じめするようなことしないわ」
「きっとみんなのために、楽しいゆうえんちを作っているのよ」
「いや、もうどこかに、寄付をしたかもしれん」
「お金をもやして、たき火をしているということはないよね」
「交番にとどけたんじゃないのか?」
「それでも、持ち主からお礼のお金がもらえるはず」
「どっちにしても、コガネムシは金持ちにちがいないんだ」
「そうだ、そうだ。コガネムシは金持ちだ!」
なかなか帰ってこないコガネムシに、イライラしはじめたのか、
みんな口ぐちに、好きかってなことを言っていました。
そうこうしているうちに、コガネムシが帰ってきました。
「やったー! コガネムシが帰ってきたぞ!」
「ばんざーい。ばんざーい」と、みんな大さわぎしました。
「どうしたんですか? みんなでぼくの家におしかけてきて」
「君がひろったというお金が見たくて、みんなここにやってきたんだ」
「それはざんねんだったね。帰るとちゅうで、落としてしまったんだ」
「ど、どこに落としたんだい?」
「あそこの田んぼだけど。まだ、いねかりをしていないので、
いねかりした後、さがそうと思ったんだ。もし、ほしいのなら、
もともとぼくのものじゃないけど、見つけたものにあげるよ」
「それ行け! はじめに見つけたもののものだ」
「その金は、おれがもらった」
「いいえ、わたしがいただくわ」
みんなわれ先にと、田んぼに飛びこみました。
「どこだ、どこだ」と、みんなさがしまわっていた時、
とつぜん「ドッカーン!」と大きな音がしました。
虫たちは、その場にころげるもの、こしがぬけたもの、
びっくりして、体がかたまってしまったものもいました。
「そら、にげろ! またドッカーンがやってくるぞ」
「耳のこまくが、やぶれないうちににげるんだ」
「今度やってきたら、しんぞうが止まるかもしれないぞ」
虫たちは、今度はいっせいに、にげだしました。
いねのほがゆれる田んぼに、また静けさがもどりました。
しばらくして、田んぼにスズメがやってきて、
一本足のかかしの頭に止まりました。
足もとで、何か光りました。
見るとそれは、コガネムシが落とした百円玉でした。
その時、「ドッカーン!」と大きな音がしましたが、
そのししおどしの大きな音に、スズメは平気でした。
もう、なれっこになていましたから。
スズメは、百円玉をつかんで飛びました。
スズメの足は、夕日でキラキラ光りました。
かかしは、口をへの字にして、それを見つめていました。
参考:口演童話「コガネムシは金持ちだ!」
口演童話
ジリジリジリ。
秋だというのに夏のようです。
汗をかきながら、コガネムシが飛んでいました。
ふと下を見ると、草むらで何かが光りました。
コガネムシは「何だろう?」と思い、おりてみました。
それは、百円玉でした。
キョロキョロキョロ。
コガネムシは、百円玉をかかえて飛んでいきました。
「見たぞ、見たぞ」
草の葉にかくれていたクツワムシが、そう言いました。
「何を見たんだい?」
ちょうど通りかかったコオロギが、そうたずねました。
「さっき、コガネムシが、お金をひろったんだ」
「いくらひろったんだい?」
「重そうにかかえて、飛んでいったから、一円玉じゃない。
百円玉? いや、あれは、五百円玉に違いない」
「聞いたぞ、聞いたぞ、聞いたぞ」
コオロギは、だれに話そうかと考えました。
カマキリに話せば、もういじめられないと思いました。
「コガネムシが大金をひろったって。
これで、かした金がもどってくるぞ。
教えてくれて、ありがとうよ、コオロギ」
その時、カマキリの目とカマが、キラリと光りました。
カマキリは、コガネムシの家に行くとちゅう、
トンボが、話しかけてきました。
「カマキリさん、きょうは何だかうれしそうな顔をしていますね」
「そりゃ、そうさ。かした金がもどってくるんだから」
「だれに、お金をかしたんですか?」
「コガネムシに一万円かしたのよ。
コオロギの話によると、コガネムシのやつ、五百万円もひろったらしくて。
今度はぎゃくに、金をかりようかと思っているくらいさ」
「ほんとうに大金ですね。私もお金をかりようかしら。新しいメガネがほしいので」
「このさい、百万でも二百万でも、かりれるだけかりればいいさ。
ほうっておいたら、金なんてすぐなくなるんだから」
カマキリが、そう言い終わるか終わらないうちに、
トンボは、もうスピードで、コガネムシの家へ飛んで行きました。
コガネムシの家についたトンボは、びっくりしました。
もうコガネムシの家には、長いぎょうれつができていました。
コガネムシがひろったお金のうわさで、みんな集まったのでした。
オオクワガタは、新しい家をたてるお金がほしいという。
モンシロチョウは、結婚するので、お祝いをしていただきたいという。
ツクツクボウシは、思い出作りに、世界いっしゅう旅行をしたいという。
カブトムシは、角をみがく高級油がほしいという。
スズメバチたちは、食べ物をほぞんするつぼを、持てるだけほしいという。
バッタは、肉屋の主人になりたいという。
虫たちの言い分を聞いていたら、きりがありません。
長い長いぎょうれつの最後に、トンボはならびました。
「こうなったら、新しいメガネは、とびっきりいいものを買うわ。
メガネのつるに、ダイヤがいっぱい散りばめられたものとか」
「それにしても、コガネムシが帰ってこないなあ」
「どこかで、大金をうめているのかもしれん」
「コガネムシは、そんな一人じめするようなことしないわ」
「きっとみんなのために、楽しいゆうえんちを作っているのよ」
「いや、もうどこかに、寄付をしたかもしれん」
「お金をもやして、たき火をしているということはないよね」
「交番にとどけたんじゃないのか?」
「それでも、持ち主からお礼のお金がもらえるはず」
「どっちにしても、コガネムシは金持ちにちがいないんだ」
「そうだ、そうだ。コガネムシは金持ちだ!」
なかなか帰ってこないコガネムシに、イライラしはじめたのか、
みんな口ぐちに、好きかってなことを言っていました。
そうこうしているうちに、コガネムシが帰ってきました。
「やったー! コガネムシが帰ってきたぞ!」
「ばんざーい。ばんざーい」と、みんな大さわぎしました。
「どうしたんですか? みんなでぼくの家におしかけてきて」
「君がひろったというお金が見たくて、みんなここにやってきたんだ」
「それはざんねんだったね。帰るとちゅうで、落としてしまったんだ」
「ど、どこに落としたんだい?」
「あそこの田んぼだけど。まだ、いねかりをしていないので、
いねかりした後、さがそうと思ったんだ。もし、ほしいのなら、
もともとぼくのものじゃないけど、見つけたものにあげるよ」
「それ行け! はじめに見つけたもののものだ」
「その金は、おれがもらった」
「いいえ、わたしがいただくわ」
みんなわれ先にと、田んぼに飛びこみました。
「どこだ、どこだ」と、みんなさがしまわっていた時、
とつぜん「ドッカーン!」と大きな音がしました。
虫たちは、その場にころげるもの、こしがぬけたもの、
びっくりして、体がかたまってしまったものもいました。
「そら、にげろ! またドッカーンがやってくるぞ」
「耳のこまくが、やぶれないうちににげるんだ」
「今度やってきたら、しんぞうが止まるかもしれないぞ」
虫たちは、今度はいっせいに、にげだしました。
いねのほがゆれる田んぼに、また静けさがもどりました。
しばらくして、田んぼにスズメがやってきて、
一本足のかかしの頭に止まりました。
足もとで、何か光りました。
見るとそれは、コガネムシが落とした百円玉でした。
その時、「ドッカーン!」と大きな音がしましたが、
そのししおどしの大きな音に、スズメは平気でした。
もう、なれっこになていましたから。
スズメは、百円玉をつかんで飛びました。
スズメの足は、夕日でキラキラ光りました。
かかしは、口をへの字にして、それを見つめていました。
参考:口演童話「コガネムシは金持ちだ!」
口演童話