口演童話「クワガタと黄金虫の約束」
毎年、山が崩され、たくさんの森林が消えていきます。
虫たちは行き場を失い、次第にその行動範囲も狭くなっていきました。
やがて、ある一本の木に沢山のクワガタと黄金虫が群がるようになり、
木の蜜を吸うのにも言い争いがはじまりました。
「いつもぶんぶんとうるさいんだよね。よそに行っとくれ」
ひときわ大きなクワガタが、まわりの黄金虫にそう言いました。
「めっきりどんぐりの木がへって、行く当てなんかないのさ。
それより仲良く蜜を分け合おうじゃないか」
そう言った黄金虫の方に、クワガタは大きなハサミを向けました。
黄金虫は、そのハサミに挟まれたら大変と飛んで逃げて行ってしまいました。
黄金虫たちは、クワガタの脅しが恐くて逆らえません。
それにクワガタたちは、自分たちの体が平たいことをいい事に、
木の隙間を奥へ奥へと進み、美味い蜜を吸うのです。
黄金虫たちの体は、ずんぐりむっくりしているので、
そんなに木の奥までは入り込めません。
たとえ入り込めたとしても、先にクワガタたちが占拠していて、
美味い密にありつけるのは、万にひとつもないくらいです。
木のカスが詰まった不味い蜜では、栄養になりません。
黄金虫たちの中には、病気で死んでいくものも増えました。
「それもこれもクワガタたちが、美味い蜜を一人占めするからだ」
と、黄金虫たちは自分たちの中では、不満もぶつけ合いますが、
仕返しが恐くて、決してクワガタの前ではそんなことは言いませんでした。
「せめてクワガタの天敵でも現れて、数が少なくなればいいのに」
と、一匹の黄金虫が、そう言いました。
あんなにクワガタと黄金虫が言い争いをしていたのに、
ある日を境にぴたり止みました。
どうもクワガタの数が減って、
黄金虫たちも美味い密にありつけるようになったからです。
最近クワガタの数が減ったのには、いろいろ噂が流れました。
神隠しにあったんだと言うものがありました。
黄金虫がうるさいので引っ越したのだと言うものもいました。
どれも確信がないものばかりでした。
クワガタの数が減ったのも不思議ですが、
みんなの中でささやかれていることがひとつありました。
「一匹の黄金虫が、どうも怪しい」ということです。
その黄金虫は、人間のスパイをしていて、
クワガタのいる場所を教えるのと引き換えに、
自分は美味い蜜をもらっているということです。
人間の世界では、クワガタで結構いい金もうけが出来るらしくて、
その取り引きの片棒を担いでいるということです。
その噂は、嘘か本当かは分かりませんが、
ある日、その噂の黄金虫がみんなの前に姿を現しました。
一匹のクワガタは、大きな声でこう言いました。
「この中に人間たちのスパイがいる。名乗り出よ!
名乗り出ないなら、俺がこのハサミで真っ二つにしてやる」
噂の黄金虫は、それが自分のことだとすぐ分かりましたが、
名乗り出ても出なくても、どうせ結果は同じと思い、じっとしていました。
すると、今度は一匹の黄金虫が、大きな声でこう言いました。
「仲間のことを思って、人間の手先になったのかもしれんが、
もう一度虫たちのことを思うなら、正直に本当のことを言ってくれ。
そして、みんなのところに戻ってきてくれ!」
しばらく、シーンっとしていて、一匹の黄金虫が木を飛び立ちました。
その時、さっと横からモズが飛んできて、その黄金虫をくわえて行きました。
その日、クワガタと黄金虫はみんなで約束をしました。
「このどんぐりの木の命を絶やすことなく、
私たちの命も絶やすことないように、助け合って生きて行こう」
参考:口演童話「クワガタと黄金虫の約束」
口演童話
毎年、山が崩され、たくさんの森林が消えていきます。
虫たちは行き場を失い、次第にその行動範囲も狭くなっていきました。
やがて、ある一本の木に沢山のクワガタと黄金虫が群がるようになり、
木の蜜を吸うのにも言い争いがはじまりました。
「いつもぶんぶんとうるさいんだよね。よそに行っとくれ」
ひときわ大きなクワガタが、まわりの黄金虫にそう言いました。
「めっきりどんぐりの木がへって、行く当てなんかないのさ。
それより仲良く蜜を分け合おうじゃないか」
そう言った黄金虫の方に、クワガタは大きなハサミを向けました。
黄金虫は、そのハサミに挟まれたら大変と飛んで逃げて行ってしまいました。
黄金虫たちは、クワガタの脅しが恐くて逆らえません。
それにクワガタたちは、自分たちの体が平たいことをいい事に、
木の隙間を奥へ奥へと進み、美味い蜜を吸うのです。
黄金虫たちの体は、ずんぐりむっくりしているので、
そんなに木の奥までは入り込めません。
たとえ入り込めたとしても、先にクワガタたちが占拠していて、
美味い密にありつけるのは、万にひとつもないくらいです。
木のカスが詰まった不味い蜜では、栄養になりません。
黄金虫たちの中には、病気で死んでいくものも増えました。
「それもこれもクワガタたちが、美味い蜜を一人占めするからだ」
と、黄金虫たちは自分たちの中では、不満もぶつけ合いますが、
仕返しが恐くて、決してクワガタの前ではそんなことは言いませんでした。
「せめてクワガタの天敵でも現れて、数が少なくなればいいのに」
と、一匹の黄金虫が、そう言いました。
あんなにクワガタと黄金虫が言い争いをしていたのに、
ある日を境にぴたり止みました。
どうもクワガタの数が減って、
黄金虫たちも美味い密にありつけるようになったからです。
最近クワガタの数が減ったのには、いろいろ噂が流れました。
神隠しにあったんだと言うものがありました。
黄金虫がうるさいので引っ越したのだと言うものもいました。
どれも確信がないものばかりでした。
クワガタの数が減ったのも不思議ですが、
みんなの中でささやかれていることがひとつありました。
「一匹の黄金虫が、どうも怪しい」ということです。
その黄金虫は、人間のスパイをしていて、
クワガタのいる場所を教えるのと引き換えに、
自分は美味い蜜をもらっているということです。
人間の世界では、クワガタで結構いい金もうけが出来るらしくて、
その取り引きの片棒を担いでいるということです。
その噂は、嘘か本当かは分かりませんが、
ある日、その噂の黄金虫がみんなの前に姿を現しました。
一匹のクワガタは、大きな声でこう言いました。
「この中に人間たちのスパイがいる。名乗り出よ!
名乗り出ないなら、俺がこのハサミで真っ二つにしてやる」
噂の黄金虫は、それが自分のことだとすぐ分かりましたが、
名乗り出ても出なくても、どうせ結果は同じと思い、じっとしていました。
すると、今度は一匹の黄金虫が、大きな声でこう言いました。
「仲間のことを思って、人間の手先になったのかもしれんが、
もう一度虫たちのことを思うなら、正直に本当のことを言ってくれ。
そして、みんなのところに戻ってきてくれ!」
しばらく、シーンっとしていて、一匹の黄金虫が木を飛び立ちました。
その時、さっと横からモズが飛んできて、その黄金虫をくわえて行きました。
その日、クワガタと黄金虫はみんなで約束をしました。
「このどんぐりの木の命を絶やすことなく、
私たちの命も絶やすことないように、助け合って生きて行こう」
参考:口演童話「クワガタと黄金虫の約束」
口演童話