道好きのスターウォーズ好き
ここに剣道好きの少年がいる。初段になったばかりで、ちょっと有頂天になっている。それでも練習のたまものですから、誰にはばかるものではありません。そんな少年が大切にしているのは、鞘付きの模造刀です。居合抜きよろしく、庭先で抜いてみせます。
あまりに早い居合ですから、目の前でばったばったと敵が倒れるようです。前に相手がいると想定して、防御や攻撃をひとりで練習するシャドーボクシングのようなものです。大事な少年の魂が宿る模造刀。鴨居の上から見ている。
ある日少年は、友達に誘われて映画「スターウォーズ」を観に行きました。今まで観たことがなかったのですが、いっぺんに好きになりました。次の新作も観てみたいと思いましたが、今回で最後ということ。見逃した作品も結局全部DVDで観ることになりました。
スターウォーズのファンになった少年は、ライトセーバーを手に入れました。鴨居に横にして飾りました。友だちに見せたくて家に誘いました。
「ほら、見て。これで正真正銘のスターウォーズファン!」
「おまえはやっぱり、剣道ファンだな」
「そんなことないよお」
「だって、美術刀の下にライトセーバーが飾られている」
「剣道も好きだけど、スターウォーズも甲乙つけ難く好きなんだ」
「剣が上で、セーバーが下。どこが甲乙つけ難いだよ」
少年が真のファンでないことがわかって、友達は怒って帰りました。少年は、スターウォーズが剣道と同じくらい好きなんだと分かってもらおうと、飾り方を変えて、また友達を誘い出しました。
「お邪魔します」
「久しぶり、さあ上がってライトセーバーを見てくれ」
剣とライトセーバーは鴨居になく、壁に並べて立て掛けてありました。
「所詮おまえは、剣道ファンだな」
「剣とライトセーバーは、並べて立て掛けてあるし、仲が良さそうじゃないか」
「何が、仲がいいだ。剣が右側にあるじゃないか。これは雛人形で言えば、左大臣がいる上手になる。上手は目上の上の人がくるところ。結局、ライトセーバーは下手に置かれ、低く見られている」
友達とは折り合いがつかず、その日も怒って帰っていってしまった。すぐLINEで勉強不足だったことをわびて、「もう一度チャンスがほしい」と伝えた。
「スターウォーズのにわかファンとは、これ以上語ることはない」と返事が来た。先に一本取られて、また一本取られてしまった。ほぼ同時期に二本取られてしまった。少年に残された最後の手段。二刀流になって友達に勝つことだけ。
「これがおまえへのクリスマスプレゼント。いざ勝負!」
参考:
剣道好きのスターウォーズ好き
ジョークボックス
ここに剣道好きの少年がいる。初段になったばかりで、ちょっと有頂天になっている。それでも練習のたまものですから、誰にはばかるものではありません。そんな少年が大切にしているのは、鞘付きの模造刀です。居合抜きよろしく、庭先で抜いてみせます。
あまりに早い居合ですから、目の前でばったばったと敵が倒れるようです。前に相手がいると想定して、防御や攻撃をひとりで練習するシャドーボクシングのようなものです。大事な少年の魂が宿る模造刀。鴨居の上から見ている。
ある日少年は、友達に誘われて映画「スターウォーズ」を観に行きました。今まで観たことがなかったのですが、いっぺんに好きになりました。次の新作も観てみたいと思いましたが、今回で最後ということ。見逃した作品も結局全部DVDで観ることになりました。
スターウォーズのファンになった少年は、ライトセーバーを手に入れました。鴨居に横にして飾りました。友だちに見せたくて家に誘いました。
「ほら、見て。これで正真正銘のスターウォーズファン!」
「おまえはやっぱり、剣道ファンだな」
「そんなことないよお」
「だって、美術刀の下にライトセーバーが飾られている」
「剣道も好きだけど、スターウォーズも甲乙つけ難く好きなんだ」
「剣が上で、セーバーが下。どこが甲乙つけ難いだよ」
少年が真のファンでないことがわかって、友達は怒って帰りました。少年は、スターウォーズが剣道と同じくらい好きなんだと分かってもらおうと、飾り方を変えて、また友達を誘い出しました。
「お邪魔します」
「久しぶり、さあ上がってライトセーバーを見てくれ」
剣とライトセーバーは鴨居になく、壁に並べて立て掛けてありました。
「所詮おまえは、剣道ファンだな」
「剣とライトセーバーは、並べて立て掛けてあるし、仲が良さそうじゃないか」
「何が、仲がいいだ。剣が右側にあるじゃないか。これは雛人形で言えば、左大臣がいる上手になる。上手は目上の上の人がくるところ。結局、ライトセーバーは下手に置かれ、低く見られている」
友達とは折り合いがつかず、その日も怒って帰っていってしまった。すぐLINEで勉強不足だったことをわびて、「もう一度チャンスがほしい」と伝えた。
「スターウォーズのにわかファンとは、これ以上語ることはない」と返事が来た。先に一本取られて、また一本取られてしまった。ほぼ同時期に二本取られてしまった。少年に残された最後の手段。二刀流になって友達に勝つことだけ。
「これがおまえへのクリスマスプレゼント。いざ勝負!」
参考:
剣道好きのスターウォーズ好き
ジョークボックス