演童話「ポン太のカーブ」
その頃、日本では高速道路がどんどんその足を伸ばしていましたが、
タヌキのポン太は、生れて一度もまだ高速道路を見たことがありませんでした。
ある時、ポン太はお母さんにたずねました。
「ねえ。高速道路ってどんなもの? 楽しいの? おいしいの?」
「高速道路というのはね。人間が作ったもので、
地面の上を大蛇がはうように横たわっていて、
その上を車という鉄の箱が、猛スピードで走るのよ。
だから、決して高速道路を横切ろうとしてはだめよ」
「はーい」と返事をしたものの、
ポン太は、その高速道路を見たくてしょうがありませんでした。
高速道路は、ポン太の住んでいる所から山を三つ越した所にありました。
お母さんに言うと、きっと行ってはだめと言われると思って、
ある日、ポン太はお母さんには内緒で、一人で高速道路を見に行きました。
一人でそんなに遠くに行くには、ちょっと勇気がいりましたが、
高速道路を見たい誘惑には勝てませんでした。
「わあ、これが高速道路か。お母さんが言っていたように、
本当に大きなヘビが地面をはっているみたいだ。
白や黒や赤の箱が高速道路をすべっているけど、
あれが車というものかなあ?
でも、お母さんは、車は猛スピードで走るって言っていたから、
あれは、車じゃないかもしれないな。
だって、足が一本も生えてないもの。
もっと近くまで行って、ちゃんと見てみよう」
ポン太は、高速道路のすぐそばまで来ました。
それで、車の足というのは丸いことがやっとわかりました。
「わあ、本当にすごいスピードで車は走るんだなあ。
遠くで見ていると、きれいな箱が川を流れるように見えていたけど」
楽しそうに車に乗っている人間たちを見ていると、
ポン太は、自分も一度車に乗ってみたいと思いました。
「車は恐いもの、人間はもっと恐いものとお母さんが言っていたけど、
ぼくにはそんなふうには見えないなあ、・・・。
ねえ、ぼくも一度その車に乗せてよ!」
と、ポン太は車の前に飛び出してしまいました。
「ポン太、だめ!」
ポン太がいなくなったのに気がついて追いかけていたお母さんが、
そう叫んだ時はもう遅く、ポン太の体は「ポーン」と宙に舞って、
まるでスローモーションを見ているように、ポン太は地面い落ちました。
「どうしてこんなことに、・・・。
もっと高速道路の怖さをちゃんと説明しておけば、こんなことには。
おおおーんっ! おおおーんっ!」
ポン太のお母さんは、泣いても泣いても涙は止まりませんでした。
ポン太の体を抱き起こしたお母さんは、
人生でいちばん悲しい出来事は、
子どもが親より先に死ぬことだと知りました。
ポン太を跳ね飛ばした車は、そのまま走り去ってしまいましたが、
その運転手は、ポン太が飛び出したのに気がついていました。
しかし、ちょうどそこがカーブだったために、スピードもだしていて、
ポン太を避けるために急にハンドルを切れなかったのです。
それでなくても、高速道路ではちょっとのハンドル操作が大事故につながります。
時々高速道路のカーブで「ポーン」という音を聞くことがあると思います。
それは、ポン太が車の屋根を「ポーン」と叩く音です。
その音に気がついた運転手はみんなスピードをゆるめます。
だから、その後に続く車もみんなスピードがゆるみます。
もし高速道路を走っていて渋滞にであって、渋滞の先に何もないときには、
それはポン太が「ぼくのこと忘れないでね」と車の屋根を叩いたのです。
どうか、渋滞にであってもイライラせずに、
また、渋滞を抜けてもポン太のことを忘れないでいてください。
-車を運転するすべての人に捧げる-
参考:
掲載の画像は、たぬきによく間違われるアライグマのものです。
口演童話「ポン太のカーブ」
たぬきとアライグマの違い
たぬきのじどうしゃ (はじめてよむ絵本)
長 新太 (著)
大型本
出版社: 偕成社; 改訂版 (1987/11)
商品パッケージの寸法: 24.2 x 19.4 x 1 cm
「かいぶつがでたのです。たすけてちょうだい」さかなにたのまれたたぬきのおじさんは、こわごわ、かわのほうへいってみました。すると、かわのなかからかいぶつがでてきました。さあ、たぬきのおじさんはどうするでしょう?
口演童話
その頃、日本では高速道路がどんどんその足を伸ばしていましたが、
タヌキのポン太は、生れて一度もまだ高速道路を見たことがありませんでした。
ある時、ポン太はお母さんにたずねました。
「ねえ。高速道路ってどんなもの? 楽しいの? おいしいの?」
「高速道路というのはね。人間が作ったもので、
地面の上を大蛇がはうように横たわっていて、
その上を車という鉄の箱が、猛スピードで走るのよ。
だから、決して高速道路を横切ろうとしてはだめよ」
「はーい」と返事をしたものの、
ポン太は、その高速道路を見たくてしょうがありませんでした。
高速道路は、ポン太の住んでいる所から山を三つ越した所にありました。
お母さんに言うと、きっと行ってはだめと言われると思って、
ある日、ポン太はお母さんには内緒で、一人で高速道路を見に行きました。
一人でそんなに遠くに行くには、ちょっと勇気がいりましたが、
高速道路を見たい誘惑には勝てませんでした。
「わあ、これが高速道路か。お母さんが言っていたように、
本当に大きなヘビが地面をはっているみたいだ。
白や黒や赤の箱が高速道路をすべっているけど、
あれが車というものかなあ?
でも、お母さんは、車は猛スピードで走るって言っていたから、
あれは、車じゃないかもしれないな。
だって、足が一本も生えてないもの。
もっと近くまで行って、ちゃんと見てみよう」
ポン太は、高速道路のすぐそばまで来ました。
それで、車の足というのは丸いことがやっとわかりました。
「わあ、本当にすごいスピードで車は走るんだなあ。
遠くで見ていると、きれいな箱が川を流れるように見えていたけど」
楽しそうに車に乗っている人間たちを見ていると、
ポン太は、自分も一度車に乗ってみたいと思いました。
「車は恐いもの、人間はもっと恐いものとお母さんが言っていたけど、
ぼくにはそんなふうには見えないなあ、・・・。
ねえ、ぼくも一度その車に乗せてよ!」
と、ポン太は車の前に飛び出してしまいました。
「ポン太、だめ!」
ポン太がいなくなったのに気がついて追いかけていたお母さんが、
そう叫んだ時はもう遅く、ポン太の体は「ポーン」と宙に舞って、
まるでスローモーションを見ているように、ポン太は地面い落ちました。
「どうしてこんなことに、・・・。
もっと高速道路の怖さをちゃんと説明しておけば、こんなことには。
おおおーんっ! おおおーんっ!」
ポン太のお母さんは、泣いても泣いても涙は止まりませんでした。
ポン太の体を抱き起こしたお母さんは、
人生でいちばん悲しい出来事は、
子どもが親より先に死ぬことだと知りました。
ポン太を跳ね飛ばした車は、そのまま走り去ってしまいましたが、
その運転手は、ポン太が飛び出したのに気がついていました。
しかし、ちょうどそこがカーブだったために、スピードもだしていて、
ポン太を避けるために急にハンドルを切れなかったのです。
それでなくても、高速道路ではちょっとのハンドル操作が大事故につながります。
時々高速道路のカーブで「ポーン」という音を聞くことがあると思います。
それは、ポン太が車の屋根を「ポーン」と叩く音です。
その音に気がついた運転手はみんなスピードをゆるめます。
だから、その後に続く車もみんなスピードがゆるみます。
もし高速道路を走っていて渋滞にであって、渋滞の先に何もないときには、
それはポン太が「ぼくのこと忘れないでね」と車の屋根を叩いたのです。
どうか、渋滞にであってもイライラせずに、
また、渋滞を抜けてもポン太のことを忘れないでいてください。
-車を運転するすべての人に捧げる-
参考:
掲載の画像は、たぬきによく間違われるアライグマのものです。
口演童話「ポン太のカーブ」
たぬきとアライグマの違い
たぬきのじどうしゃ (はじめてよむ絵本)
長 新太 (著)
大型本
出版社: 偕成社; 改訂版 (1987/11)
商品パッケージの寸法: 24.2 x 19.4 x 1 cm
「かいぶつがでたのです。たすけてちょうだい」さかなにたのまれたたぬきのおじさんは、こわごわ、かわのほうへいってみました。すると、かわのなかからかいぶつがでてきました。さあ、たぬきのおじさんはどうするでしょう?
口演童話