漫才「目に入れても痛くない」
「遅れましたが、結婚しました」
「ああ、あのカップルのことなら週刊誌で見たよ」
「違うよ。ぼくが結婚したんだよ」
「ええ、そんな相方に相談もなく」
「ぼくの結婚だからぼくと相手の彼女がよかったら、お前に相談する必要ないだろう」
「まあそうだが、結婚式も呼んでくれなかったじゃないか」
「ふたりともお金もなかったし、地味婚でしたんだ。ぼくたち二人と、両方の親同士で」
「それでも相方には、知らせてくれてもいいんじゃないか?」
「だから今知らせている」
「遅いよ。相方なのに水臭いよ」
「そんなに臭いかなあ。嫁がちゃんと洗濯してくれたんだけど」
「何、体のニオイかいでいるんだ」
「今臭いって言ったから。いい匂い」
「だから『水臭い』って言っているんだよ」
「しょうがないだろう洗濯の最後は水で洗うんだから。文句言うなら、水道局に言って」
「その水臭いじゃないって」
「じゃあ何?」
「ずっと二人で漫才やって来たのに、他人行儀だって言っているんだよ」
「そりゃそうさ。ぼくたち他人だよ。ぼくたち兄弟漫才じゃないよ」
「それはわかっている」
「お前と兄弟になりたくはない。兄弟になったら、顔が似るだろう。遠慮しとく」
「こっちだって遠慮したいね」
「前から思っていたんだが、お前ぼくによく何かにつけ遠慮するね。他人行儀だね。お前が水臭いんじゃないか」
「あれえ? なんでぼくが水臭くなっているんだよ」
「根っからの『水臭い人間』だから」
「あのね。結婚するんだったら、前もって相方なんだから教えてほしいんだ」
「どうして?」
「週刊誌が嗅ぎつけて、相方結婚したみたいですねなんて言われたくないよ」
「どうして?」
「そんなの二人仲が悪いと思われるし」
「実際そうなんだし、知ってもらえるいい機会だよ」
「おい、そんなこと言ったら、コンビに傷が入るぞ」
「もうやってられなってか? 結婚するので、コンビ解散ですみたいな寿退社」
「おまえってそういうやつだったんだな! こっちからコンビ解散してやる!」
「ほら見ろ、結局二人の仲を割くのは、お前なんだ。これで仲が悪いのがわかっただろう」
「何でこうなるの? ひょっとしてお前が誘導しているんじゃないの」
「そりゃそうさ。このネタを書いているのはぼくなんだから。ペン先三寸でどうにでもなる」
「それは認めるけど、やっぱり結婚のことは教えておいてほしい。知らなかったら相方として恥ずかしい」
「情事があって、結婚急いでやってしまったんだ」
「情事?」
「事情だよ。気が動転していろいろ間違えたんだ」
「どんな情事だい?」
「乗っかってくるんじゃないよ。子どもができてしまって、彼女の御両チンがどう責任をとってくれるんだってすごい剣幕」
「なに、御両チン?」
「ご両親だよ。察しろよ。舞台で動転させるなよ。それですぐ結婚しますって言ったんだ」
「それで」
「証拠を見せろって言うもんで、これからしますとなって急遽の挙式」
「だから、結婚式への招待状が届かなかったんだね」
「そんなこんなで事情がって連絡できなかったんだ」
「事情はわかったよ。でも子どもが生まれたら大変だよ」
「そうだね。嫌な仕事も断れないし、もっと稼がないと」
「今だって断ってないし、断りたいくらい仕事が入ってほしい~!」
「切実だね。家庭を持つと、こうも変わるんだね」
「これで子どもが生まれたら、子煩悩だし。仕事から帰ったら、自分の子どもは、目に入れても痛くないんだろうね」
「それは言いすぎだよ。いくら可愛いのかかもしれないけど、目に入れたら痛いよ。赤ちゃんでもこれくらいあるだろう。これをゆっくりゆっくり入れても極痛で、拷問だよ」
「わかってないなあ。親ばかってことだよ」
「お前が馬鹿なのは、前々から重々知っています」
「馬鹿なのはお前の方だよ」
「誰が子どもを本当に目に入れるって言ったんだ」
「たった今、仕事から帰宅して、子どもを目に入れても痛くないって」
「可愛くて大事な子どもだから、痛くても我慢できるんだよ」
「ほらやっぱり入れるんだ。まぶたびっくりするくらい、これくらい腫れぼったくなって、もう何年も寝ていないくらい。ギネス級だね」
「大事な子どもを笑いにしないでくれる? 生まれてきにくいじゃないか。生まれる前から笑われちゃ」
「わかった。大事なものは目に入れても痛くない例えだね」
「やっとわかってくれた?」
「じゃあ相方のぼくも目に入れられる」
「お前はできない」
「どうして、相方大事だろう?」
「お前は、ペン先三寸で遊びたいだけだから」
参考:漫才「目に入れても痛くない」
ジョークボックス
「遅れましたが、結婚しました」
「ああ、あのカップルのことなら週刊誌で見たよ」
「違うよ。ぼくが結婚したんだよ」
「ええ、そんな相方に相談もなく」
「ぼくの結婚だからぼくと相手の彼女がよかったら、お前に相談する必要ないだろう」
「まあそうだが、結婚式も呼んでくれなかったじゃないか」
「ふたりともお金もなかったし、地味婚でしたんだ。ぼくたち二人と、両方の親同士で」
「それでも相方には、知らせてくれてもいいんじゃないか?」
「だから今知らせている」
「遅いよ。相方なのに水臭いよ」
「そんなに臭いかなあ。嫁がちゃんと洗濯してくれたんだけど」
「何、体のニオイかいでいるんだ」
「今臭いって言ったから。いい匂い」
「だから『水臭い』って言っているんだよ」
「しょうがないだろう洗濯の最後は水で洗うんだから。文句言うなら、水道局に言って」
「その水臭いじゃないって」
「じゃあ何?」
「ずっと二人で漫才やって来たのに、他人行儀だって言っているんだよ」
「そりゃそうさ。ぼくたち他人だよ。ぼくたち兄弟漫才じゃないよ」
「それはわかっている」
「お前と兄弟になりたくはない。兄弟になったら、顔が似るだろう。遠慮しとく」
「こっちだって遠慮したいね」
「前から思っていたんだが、お前ぼくによく何かにつけ遠慮するね。他人行儀だね。お前が水臭いんじゃないか」
「あれえ? なんでぼくが水臭くなっているんだよ」
「根っからの『水臭い人間』だから」
「あのね。結婚するんだったら、前もって相方なんだから教えてほしいんだ」
「どうして?」
「週刊誌が嗅ぎつけて、相方結婚したみたいですねなんて言われたくないよ」
「どうして?」
「そんなの二人仲が悪いと思われるし」
「実際そうなんだし、知ってもらえるいい機会だよ」
「おい、そんなこと言ったら、コンビに傷が入るぞ」
「もうやってられなってか? 結婚するので、コンビ解散ですみたいな寿退社」
「おまえってそういうやつだったんだな! こっちからコンビ解散してやる!」
「ほら見ろ、結局二人の仲を割くのは、お前なんだ。これで仲が悪いのがわかっただろう」
「何でこうなるの? ひょっとしてお前が誘導しているんじゃないの」
「そりゃそうさ。このネタを書いているのはぼくなんだから。ペン先三寸でどうにでもなる」
「それは認めるけど、やっぱり結婚のことは教えておいてほしい。知らなかったら相方として恥ずかしい」
「情事があって、結婚急いでやってしまったんだ」
「情事?」
「事情だよ。気が動転していろいろ間違えたんだ」
「どんな情事だい?」
「乗っかってくるんじゃないよ。子どもができてしまって、彼女の御両チンがどう責任をとってくれるんだってすごい剣幕」
「なに、御両チン?」
「ご両親だよ。察しろよ。舞台で動転させるなよ。それですぐ結婚しますって言ったんだ」
「それで」
「証拠を見せろって言うもんで、これからしますとなって急遽の挙式」
「だから、結婚式への招待状が届かなかったんだね」
「そんなこんなで事情がって連絡できなかったんだ」
「事情はわかったよ。でも子どもが生まれたら大変だよ」
「そうだね。嫌な仕事も断れないし、もっと稼がないと」
「今だって断ってないし、断りたいくらい仕事が入ってほしい~!」
「切実だね。家庭を持つと、こうも変わるんだね」
「これで子どもが生まれたら、子煩悩だし。仕事から帰ったら、自分の子どもは、目に入れても痛くないんだろうね」
「それは言いすぎだよ。いくら可愛いのかかもしれないけど、目に入れたら痛いよ。赤ちゃんでもこれくらいあるだろう。これをゆっくりゆっくり入れても極痛で、拷問だよ」
「わかってないなあ。親ばかってことだよ」
「お前が馬鹿なのは、前々から重々知っています」
「馬鹿なのはお前の方だよ」
「誰が子どもを本当に目に入れるって言ったんだ」
「たった今、仕事から帰宅して、子どもを目に入れても痛くないって」
「可愛くて大事な子どもだから、痛くても我慢できるんだよ」
「ほらやっぱり入れるんだ。まぶたびっくりするくらい、これくらい腫れぼったくなって、もう何年も寝ていないくらい。ギネス級だね」
「大事な子どもを笑いにしないでくれる? 生まれてきにくいじゃないか。生まれる前から笑われちゃ」
「わかった。大事なものは目に入れても痛くない例えだね」
「やっとわかってくれた?」
「じゃあ相方のぼくも目に入れられる」
「お前はできない」
「どうして、相方大事だろう?」
「お前は、ペン先三寸で遊びたいだけだから」
参考:漫才「目に入れても痛くない」
ジョークボックス