屋内マシンマラソン世界大会
マラソンに参加する選手たちが、軽快な音楽に合わせて入場してきました。世界各地から集まった選抜100名による第一回屋内マシンマラソン世界大会です。このドームのトラックを一周して、輪になって並びました。42.195kmを制するのは誰でしょう。まもなくスタートです。
さあ、また音楽が流れ始めました。選手たちは再びトラックを回りはじめました。音楽が止まったら、目の前にあるウォーキングマシンに飛び乗ります。とはいってもマシンは、99台しかありません。乗れなかった選手は、この時点で一人脱落ということになります。
音楽が止まりました。ほとんどの選手は、目の前にあるマシンに乗ることができました。ところが二人の選手が、残りの1台を探しています。椅子取りゲームのトレーニングをちゃんとしてきた選手だけが、スターラインにつけるという塩梅です。
自分のマシンが決まった選手は、5分間のマシンのチェックが許されています。モーターの異常音などがあれば、すぐ新しいマシンに交換がされるという運びです。そうこうしているうちに最後の選手も決まり準備もできました。
管理センターから「3、2、1、0」の合図のスタートボタンが押されました。足元のベルトのスピードも角度も、管理センターで一括に変更されます。選手自身が走りのスピードは調整できません。ちょっとだけ歩こうと思っても、ベルトのスピードについていけなくて、マシンの後ろに流されて落ちることになります。
マシンから落ちたら怪我をするかもしれません。怪我は選手生命に関わります。だから大抵はマシンについてる赤いボタンを選手が押して、自分からマラソンを棄権します。マシンのスピードについていけなくなった選手は、どんどん脱落することになります。
マシンにある表示板には、走った距離、時計、心拍、カロリーなどが計算されて表示されます。ドームの空調は調整されていて、直射日光にさらされることも強風にあおられることもありません。それに事前にマラソンのプログラムは公開されていて、自宅にマシンがあれば家で練習することも可能です。
屋外のマラソン大会でしたら、補水に失敗することがありましたが、屋内マラソンでは、いつでも目の前にあるペットボトルを手にすることができます。プログラムも音声ガイダンスで知らせてくれます。「5分後にスピードが、何々になります」のように。
一応マラソンコースのプログラムが公開されているので、覚えていれば、途中「5分後にスピードが、何々になります」と言われても戸惑うことはありません。選手の監督は横に立って指示することが出来ます。形だけの並走ということになります。
プログラム通りに走ることができれば、残っている選手が、みんな1位ということになります。ですから、脱落者を出すためにその時の管理センターの裁量で、残り3㎞になったとき、スピードやベルトの角度を目まぐるしく変えます。それについていけた人が、金メダルを手にすることになります。
かくして第一回屋内マシンマラソン世界大会の優勝者は、大富豪の息子でした。管理センターの職員たちに賄賂を贈って、息子のマシンだけをスピードを緩めたりしていました。マシンも大富豪の国から高額で輸入したものでした。
大会終了後、「あいつ、過酷なプログラムを平気な顔でゴールした。怪しい」と憶測が飛んだ大会でした。疑惑を記事にした週刊誌や新聞社には、大富豪から賄賂が届き、その後のニュースの広がりのスピードが落ちていきました。第二回大会が開かれたかどうかは不明です。
参考:屋内マシンマラソン世界大会
口演童話
マラソンに参加する選手たちが、軽快な音楽に合わせて入場してきました。世界各地から集まった選抜100名による第一回屋内マシンマラソン世界大会です。このドームのトラックを一周して、輪になって並びました。42.195kmを制するのは誰でしょう。まもなくスタートです。
さあ、また音楽が流れ始めました。選手たちは再びトラックを回りはじめました。音楽が止まったら、目の前にあるウォーキングマシンに飛び乗ります。とはいってもマシンは、99台しかありません。乗れなかった選手は、この時点で一人脱落ということになります。
音楽が止まりました。ほとんどの選手は、目の前にあるマシンに乗ることができました。ところが二人の選手が、残りの1台を探しています。椅子取りゲームのトレーニングをちゃんとしてきた選手だけが、スターラインにつけるという塩梅です。
自分のマシンが決まった選手は、5分間のマシンのチェックが許されています。モーターの異常音などがあれば、すぐ新しいマシンに交換がされるという運びです。そうこうしているうちに最後の選手も決まり準備もできました。
管理センターから「3、2、1、0」の合図のスタートボタンが押されました。足元のベルトのスピードも角度も、管理センターで一括に変更されます。選手自身が走りのスピードは調整できません。ちょっとだけ歩こうと思っても、ベルトのスピードについていけなくて、マシンの後ろに流されて落ちることになります。
マシンから落ちたら怪我をするかもしれません。怪我は選手生命に関わります。だから大抵はマシンについてる赤いボタンを選手が押して、自分からマラソンを棄権します。マシンのスピードについていけなくなった選手は、どんどん脱落することになります。
マシンにある表示板には、走った距離、時計、心拍、カロリーなどが計算されて表示されます。ドームの空調は調整されていて、直射日光にさらされることも強風にあおられることもありません。それに事前にマラソンのプログラムは公開されていて、自宅にマシンがあれば家で練習することも可能です。
屋外のマラソン大会でしたら、補水に失敗することがありましたが、屋内マラソンでは、いつでも目の前にあるペットボトルを手にすることができます。プログラムも音声ガイダンスで知らせてくれます。「5分後にスピードが、何々になります」のように。
一応マラソンコースのプログラムが公開されているので、覚えていれば、途中「5分後にスピードが、何々になります」と言われても戸惑うことはありません。選手の監督は横に立って指示することが出来ます。形だけの並走ということになります。
プログラム通りに走ることができれば、残っている選手が、みんな1位ということになります。ですから、脱落者を出すためにその時の管理センターの裁量で、残り3㎞になったとき、スピードやベルトの角度を目まぐるしく変えます。それについていけた人が、金メダルを手にすることになります。
かくして第一回屋内マシンマラソン世界大会の優勝者は、大富豪の息子でした。管理センターの職員たちに賄賂を贈って、息子のマシンだけをスピードを緩めたりしていました。マシンも大富豪の国から高額で輸入したものでした。
大会終了後、「あいつ、過酷なプログラムを平気な顔でゴールした。怪しい」と憶測が飛んだ大会でした。疑惑を記事にした週刊誌や新聞社には、大富豪から賄賂が届き、その後のニュースの広がりのスピードが落ちていきました。第二回大会が開かれたかどうかは不明です。
参考:屋内マシンマラソン世界大会
口演童話